昔、飛んだことがある。

 

 ここのブログはとにかくどんな記事でも文字を書くことを目標にしているのですが、それにしても最近ごはんしかあげていないので、実体験を書いてみようと思います。

 

 それは、私が大学生のとき。バイト先での出来事でした。というか、この段階で「飛んだというなら、なんでバイト先の話になるのか」とお思いでしょうが、まあ、飛行機に乗った話ではありません。

 

 

飛ぶ前の出来事

 

 私はとあるファミレスチェーンでアルバイトをしていました。バイト先には高校生から大学生、パートのおばちゃんからパリピといろいろな人がいて、結構面白かったです。

 このバイト先ではいろいろ人生の教訓も学んだのですが、今日は飛んだ話なのでそれは置いておきます。

 

 

 私は中学生の頃から同人誌を嗜む(?)オタクでした。その日は大学生の男子SにBL本を見せるために、カバンに同人誌が入っていました。確かSが「どんなBL本買ったのか見せて」と言ったから持って行ったんだと思います。表紙はどうしても他人の目に触れるので、表紙はあまり危なくない本を持って行ったはずです。「へー面白いね。こういう本なんだ」と、その男子は大変興味深そうに読んでいました。

 と、そこへ、仕事を終えた可愛い高校生が休憩室に入ってきました。表紙は問題なかったので、そのときは特段、私は反応しませんでした。

 ところが、少し会話をした後、その可愛い高校生がSに声を掛けたのです。

 

「その本、何ですか?」と。

 

 私とSは震えました。自分たちは全てお互い了解しているし、正直、自分と同じ年齢以上で話がわかる人にはむしろちょっと押し付けてやろうかと思って見ていました。

 ですが、声を掛けてきた女子高生は、多分、私の趣味が分からない。アニメは漫画の二次創作はまだしも、そのキャラクターを使って勝手に話を作り、あまつさえエロ(しかも結構ハードだった)なんて、とてもじゃないけどこんな可愛い子に見せたくない。

 

 いや、知られたくない。私たちがこんなに汚れた大人だなんて。

 

 という思考が一瞬で駆け巡っている間に、動かない私たちに再度、女子高生は声を掛けてきました。

 

「見せてもらってもいいですか?」と。

 

 いいわけありません

 ですがSは、一応自分の持ち物ではないこと、「押し付けられた」と言い逃れができると判断したのか、なんと差し出す仕草をしたのです。

 

「な、ちょ! やめ……」

 

 私は慌てて立ち上がりました。それを回収せんがために、私は向かいに座っているSの手を止めるためにそこに向かおうと足を出そうとしました。

 そのとき、私の足元ではちょっと大変なことが起こりました。

 

 

 

一体何が起こったのか

 

 足の指が、私の合皮製のカバンの持ち手に引っかかったのです。しかし、それだけではありませんでした。

 

 私のカバンは、常日頃から一体何が入っているのかと他人に聞かれるくらいに荷物が詰まっているため、とても重いのです。その日も、ゲームやら本やらノートやら、いつも通りめちゃめちゃ重かった。

 そのカバンの持ち手に、足が引っかかったのです。

 不幸にも、引き返すスペースは椅子が詰まって置かれていた為ありません。ここから足を引っこ抜く以外に術はありませんでした。なので、私は引っかかった持ち手から足を引き抜こうとして、最初の勢いに任せて力いっぱい足を上げたのです。

 

 引っかかったカバンの持ち手は合皮。私の足も皮で覆われています。

 

   当然、摩擦は0ではありません。強引に持ち上げようとした足の皮と持ち手の合皮の摩擦力は、どうもカバンの重さより強かったようでした。

 

 カバンは持ち上がりました。

 単純に考えても、5キロ以上はあったように思います。当時はいろいろな紙製品やウォークマンなどの電子機器を入れていました。確かDSも入っていたのではなかったでしょうか。つまり、私の足の中指には、5キロ以上の負荷がかかったのです。

 

 想定外の重量と足の勢いに一瞬カバンは浮いたものの、すぐに「ドスン!」といってカバンは床の上へ。しかし、私の足は引っこ抜こうと一生懸命浮き上がろうとしていました。

 

 

 こうして、私は空を飛びました。アイキャンフライ。

 

 

 何を言ってるかわからないって? それが、一瞬空を飛んだ時の私の感想です。何が起こったのか、わかりませんでした。

 一瞬、全身が宙に浮き、少し前方に移動したような気がしました。その先にはパソコンをいじっている店長がいたのですが、後ろの騒ぎにこちらを振り返っています。私はその足元に落ちました。落下したのです。

 

「おい、大丈夫か……」

 

 突然足元に転がり落ちてきた私に何が起こったのか、店長も分からなかったようです。

 そりゃそうですよね。さっきまで、少し離れた椅子でけたけた笑って話していたはずなのに足元に転がってきたんですから。

 

 

空を飛んだ後の話

 

 しばらく私は床の上でもんどりうっていました。店長も、とりあえずなんか「空飛んで落ちてきた」としか考えられなかったらしく心配してくれて、ほかの人も心配してくれましたが、Sだけは「そんなに見られたくないのか………」と思っていたらしいです。というか人のエロ本をほかの人に見せようとするんじゃない。というより以前の問題として、そもそも自分がエロ本を持っていくなという話でもありますが。 

 

 しばらくして落下の衝撃は治まったものの、どうにもこうにも足の指が痛い。そういえば、さっきなんか引っかけたような気がする。と、ここでようやくそのことを思い出しました。遅い。

  なんとかその場でBL本が可愛い高校生の目に触れることなく返却され、私は家に帰りました。しかし、指が痛すぎて靴が履けません。正直、靴が履けないのにどうやって家に帰ったのか記憶がありません。

 

 翌日になっても痛みは引かず、正直思い出してみると結構強い力で足を上げたような気がします。全身(当時体重50キロ台後半)が宙に浮くぐらいの勢いで力を入れたのであれば、相当強い負荷がかかったと思われ、思い切って整形外科に行くことに。

 

 診察の結果。

 

「骨折です」

 

 足の中指の上から二つ目の骨にヒビが入っていました。

 

「え、骨折って、ヒビなのに?」

「ヒビでも何でも、骨が損傷したら骨折と呼ぶんです。そんなことより」

 

 へーヒビでも骨折って言うんだーと思っていた私に、医者からの言葉が続きます。

 

「何してこんなとこ折ったの?」

「……」

 

 ですよね。

 あまりに理由が情けなく、とりあえず通りがかりに置いてあった自分の荷物に足を引っ掛けてしまったことにしました。ある意味では間違ってないのですが……

 

「それでもカバンに足引っ掛けただけで骨折はしないでしょ普通」

 

 ですよね。(2回目)

 お医者さんはとにかく動かさないように固定して、2週間後にまた来るようにと言われました。固定するときも、

 

「これどうやる? ここにこうして、両隣の指との間に詰め物して、添え木がわりにして巻き込むしかないよね?」

 

 すごく悩んでいました。本当に申し訳ない。

 

 しばらくはお風呂に入るときも患部は濡らさないようにビニール袋とかでグルグル巻きにして入るようにとか、靴はダボダボのサンダルみたいなのを履いて、とにかく固定する以外には圧迫しないようにと言われ、帰宅しました。

 

 

 もうアホすぎて。

 

 家族にはBL本のくだり以外は言いましたけど、呆れられましたよね。そりゃそうですよね。なんだよ飛ぶって。さらにヒビとはいえ骨折って。情けなさに打ち震えた、そんな出来事でした。

 

 

 オマケ

 

 その2週間後、固定が取れた後にバイトでまた同じ場所を脚立の足に打つという泣きっ面にハチみたいなこともやらかしました。何でまたやったん?